25 2月

「本当に描きたい絵が私にはある」

親代わりのもとで私が青年の頃には喫茶店でバーテンダーをして働いていた。そこにお客様として毎日コーヒーを飲みに来ていた画家がいた。一風風変わりな雰囲気をいつも感じていた私。
ある日、何の前触れもなく、その画家が油絵一式を揃えてプレゼントしてくれた。絵を教えてくれると言ったが、結局は一度も教えてくれなかった。それから、何故か私は画集を集めるのが趣味となった。
ところで、いろいろな画家がいるが、興味以上の関心度がたかい画家は、フィンセント・ファン・ゴッホである(国籍:オランダ、ポスト印象派、後に後期印象派の画家。満37歳没)。
現代において、彼の絵の評価は高いが、彼の油絵が生前正式に売れたのは、たった一枚「赤いぶどう畑」だけであるといわれている。
彼は、1885年5月にサン=レミの精神病院に入院して1890年5月頃まで療養生活をしていたが、そこにおいても超越した激しさで絵を描き続けていたといわれている。
彼が残した次の言葉がある。「99回倒されても、100回目に立ち上がればよい」…、その彼が、100回目に立ち上がった後に、1890年7月27日の暑い暑い日曜日の午後、自然の風景の中で畑の土に自らがかえっていった。自然に抱かれたゴッホ。
私は、なにゆえに彼に関心度がたかいのか。彼が本来、真実まことをもって向き合い描きたかった対象とは何か。
それは彼の目に写る対象物ではなく、ゴッホ自らの存在感とその生命力ではなかったのかと感じるからである。
私は何回倒されてもいい。何回目でも立ち上がる。存在感と生命力をもって。